「フォールガイ」:スタントマンの仕事って本当に大変!映画が教えてくれる裏側とは
現在公開中の映画「フォールガイ」はスタントマン出身の監督がノリに乗って作った傑作アクションです。
デビッド・リーチ監督の映画としては「アトミック・ブロンド」に次ぐ面白さで前作の「ブレット・トレイン」と同じ監督が演出した作品とはとても思えない出来です。まさにデビッド・リーチ監督面目躍如の映画と言えます。
本編ではもうこれでもかという感じでスタンマンという仕事の面白さをドラマとして見せてくれます。まず、オープニングで今回の映画とは関係ないスタントマンたちの名シーンが1〜2分くらい続きます。これが結構見ていてすごいシーンの連続です。「アトミック・ブロンド」の中の1シーンも確かにありました。
カーアクションはもとより、ボートアクション、火だるまスタント、フォールガイ、落ちるスタントも魅せてくれます。そこで今回はこの映画を通して、スタントマンの仕事について書いてみたいと思います。
映画「フォールガイ」の魅力
映画「フォールガイ」は、ハリウッドの裏側で繰り広げられるスタントマンたちの過酷で華やかな日常を描いたアクション映画です。スタントマンとしての栄光と挫折を経験したライアン・ゴズリング演じる主人公コルト・シーバースが、再び危険なスタントの世界へと足を踏み入れ、驚愕の事実と壮絶なバトルに巻き込まれていく物語です。
本編では息をのむようなアクションシーンが満載の、まさにアクション映画好きにはたまらない一作です。高層ビルからのダイブやカーチェイスなど、スタントマンたちの命懸けの仕事がスクリーンいっぱいに広がります。また、アクションだけでなく、人間ドラマも深く描かれた作品です。スタントマンという過酷な職業に生きる人々の友情、葛藤、そして成長が、リアルに描かれています。アクションシーンだけでなく、登場人物たちの心の動きにも注目して見てほしい映画といえます。さらにラストには意外な人物が悪の親玉だったことが明らかになります。
ストーリー
ハリウッドの裏側で繰り広げられる、スタントマンたちの命懸けのドラマ
かつては数々のスタントをこなすトップスタントマンだったコルト・シーバース。しかし、大ケガを負い、一線を退いていた。そんなコルトのもとに、元恋人の監督・ジョディからの仕事依頼が舞い込む。それは、主演俳優のトム・ライダーのスタントを請け負うというものであった。トムは、コルトのことをライバル視しており、過去に何度も彼をクビにした因縁の相手。それでも、ジョディとの関係修復を望むコルトは、この仕事を引き受ける。
撮影現場に戻ったコルトは、再びスタントマンとしての才能を発揮し始める。しかし、そんな矢先、トムが突如として姿を消してしまう。映画プロデューサーのゲイルは、トムの失踪に何か裏があると思い、コルトに捜索を依頼します。
コルトは、トムの行方を追ううちに、裏側で暗躍する危険な組織の存在に気づきます。それは、トムの失踪もその陰謀に関係していることが明らかになり、コルトは、自分のスタントマンとしてのスキルを駆使し、この陰謀に立ち向かうことを決意します。高層ビルからのダイブ、カーチェイス、激しい格闘など、命懸けのスタントを繰り広げながら、トムを見つけ出し、陰謀を暴こうとします。
果たして、コルトはトムを見つけ出し、ハリウッドの陰謀を暴くことができるのか?そして、彼はスタントマンとしての道を再び歩み始めることができるのか?
映画が描くスタントマンのリアルな姿
『フォールガイ』は、スタントマンの華やかな一面だけでなく、その仕事の裏側にある影も描き出しています。怪我のリスクと常に隣り合わせの仕事、体力的な限界に挑戦し続けなければならない日々、そして、一時の輝きが永遠に続くわけではないという現実。映画は、スタントマンという職業のリアルな姿を、ありのままに私たちに伝えてくれます。
映画の中で、主人公が高層ビルから飛び降りるシーンがありますが、このシーンは、スタントマンの仕事がいかに危険であるかを如実に表しています。このシーンはワイヤーワークを使って撮影されたとはいえ、実際に高いところから飛び降りることは並大抵のことではありません。ライアン・ゴズリングは高所恐怖症にも関わらず実際に演じきったそうです。こういうシーンをスタント用語で「ハイフォール」と言います。映画は、このような危険なスタントシーンの裏側で、スタントマンたちがどのような努力をしているのかを、私たちに見せてくれます。
ロケ裏話=フォールガイはこうやってできた
世界記録更新のキャノンロール
映画『フォールガイ』は、その過激なスタントの中でも、特に「キャノンロール」と呼ばれるスタントが話題となってます。
キャノンロールとは、車内に設置されたキャノン砲を発射することで、その反動を利用して車を回転させる非常に危険なスタントです。映画『フォールガイ』のキャノンロールは、これまでのギネス世界記録を大幅に更新し、8.5回転しました。
これまでの記録は、2006年の映画『007/カジノ・ロワイヤル』の7回転でした。これを大きく上回ったのです。また、キャノンロールの撮影は、綿密な準備が必要です。スタントカーの改造、安全対策、撮影場所の選定など、あらゆる面で万全を期す必要があります。
最も適した車としてジープのグランドチェロキーが採用されました。車幅と車高が等しい円筒状で、回転に適した車だからです。
圧巻のカージャンプ
映画『フォールガイ』のアクションシーンは、そのダイナミックさとスリルが特徴です。高層ビルからのダイブ、カーチェイス、格闘シーンに加え、カージャンプも忘れてはならない要素の一つです。
この映画の中で見ることができる脅威のスタントの一つが約70メートルのカージャンプです。実際に脅威の距離を飛べるように特別にデザインされた車が使われたそうです。ジャンプの高さは最高で25メートル。効率化のためテスト撮影用と実際のセットの準備を行うため、全く同じセットがもう一つ作られたそうです。まさにプロの仕事です。
スタントマンの主な仕事内容
映画『フォールガイ』は、スタントマンという職業の多岐にわたる仕事内容を克明に描き出しています。単にアクションシーンで代役を務めるだけでなく、スタントマンには様々な役割が求められます。
アクションシーンでの代役
高所からの落下:
高層ビルから飛び降りるシーンや、ヘリコプターから飛び降りるシーンなど、命を危険に晒すような高所からの落下シーンは、スタントマンの代表的な仕事の一つです。この映画でもヘリコプターからのハイフォールがありますが、ここでは実際のスタントマンが演じてます。高さは45メートル!まさに命がけです。
爆発シーン:
爆発物を使ったシーンでは、火傷や爆風などの危険と隣り合わせで撮影が行われます。作品でも何回も爆発物を使ったシーンがありますがこれもライアン・ゴズリングではなく、専門のスタントマンが演じてます。
格闘シーン: 俳優に代わって、激しい格闘シーンを演じます。安全を確保しつつ、迫力のあるアクションを表現する必要があります。
カーチェイス:
高速で走る車のスタントや、激しい衝突シーンなど、危険度の高いカーチェイスシーンも、スタントマンの仕事です。この映画ではゴミ収集車のカーアクションがあり、ここでは50人近くのスタントドライバーが活躍したそうです。
危険なシーンでの代役
火災シーン: 火災現場での撮影では、火傷の危険性だけでなく、煙による窒息の危険性もあります。
水中シーン: 水中での撮影は、溺れる危険性があるため、高度な水泳スキルが求められます。
動物との共演: 動物との撮影では、動物の行動を予測し、安全に撮影を進める必要があります。
その他
ワイヤーワーク: ワイヤーを使って空中を飛んだり、壁を走ったりするシーンで活躍します。
特殊メイク: 怪我や変形した身体などを表現するために、特殊メイクを施すこともあります。
とにかく、スタントマンの仕事は、単なるアクションシーンの代役にとどまりません。彼らは、危険と隣り合わせの仕事の中で、私たちの目にできないところで、映画を影で支えているのです。映画『フォールガイ』は、そんなスタントマンたちの姿をリアルに描き出し、私たちに深い感銘を与えてくれます。
感想と余談
この映画は映画製作の裏側を見せてくれる、数少ないエンターテイメント映画だと思います。なるほどこうやって撮影してるのねと実にわかりやすく分からせてくれる数少ない第一級の娯楽映画だと思います。映画ファンなら見なきゃ損です。
ちなみに映画の中で劇中劇で出てくるメタルストームは過去に実際に作られ大こけした映画です。同じユニバーサル作品だから出せたと思われます。この劇中劇はDUNEを明らかにイメージしてます(音楽もそっくり!)が権利関係は大丈夫だったんでしょうか?
そして、最後にはDUNEに出演した役者まで出てくるノリの良さ。それとも悪ノリ?このスター、ライアンに比べるとちょと太めだとわかります。ある意味イメージダウンでかわいそう。
ラストには実際の今回の映画のスタントマンの仕事風景がサービスカットで出るのも楽しいです。
さらにミッドクレジットシーンにはテレビでコルト・シーバース役を演じたリー・メジャースが出てきたのには驚きました。オリジナルに敬意を表してる証拠だと思います。