ターミネーターと時代劇が合体!?「侍タイムスリッパー」のヒットの理由に迫る。
時代劇映画に新たな旋風が巻き起こる!
現在公開中の映画「侍タイムスリッパー」が、異例の大ヒットを記録しています。「侍タイムスリッパー」は、幕末の侍が現代の京都にタイムスリップし、時代劇映画の撮影所で斬られ役として働くことになるという、奇想天外なストーリー。
まるでタイムトラベルものと時代劇が合体したかのような、斬新な設定と、笑いあり涙ありの展開が、多くの観客を魅了しています。当初は1館のみの限定公開だったにもかかわらず、口コミで評判が広がり、上映館が続々と拡大。現在では150以上の映画館で公開中です。
タイムトラベルものといえば、世紀の大ヒット映画「ターミネーター」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出しますが「ターミネーター」の場合、未来から過去に。この映画は過去から現在にタイムスリップ。ただ、古今東西、数々の映画が公開されてますが。時代劇とタイムトラベルが合体した映画は個人的には見たことがありません。そういう意味ではまさに斬新な時代劇と思います。
一体なぜ、この映画はこれほどまでに人々の心を掴むのでしょうか?今回は、「侍タイムスリッパー」のヒットの理由を、様々な角度から分析していきます。また、この映画のロケ地と称される地域も紹介したいと思います。
「侍タイムスリッパー」ってどんな映画?
「侍タイムスリッパー」は、幕末の会津藩士・高坂(こうさか)新左衛門が主人公の時代劇コメディです。
新左衛門は、ある夜、長州藩士を討つ密命を受けて京都へ赴きます。しかし、激しい戦いの最中、落雷に打たれてなんと現代に(2007年)タイムスリップ! 目を覚ますと、そこは時代劇の撮影現場でした。
江戸幕府がすでに滅亡し、侍という存在が過去のものとなった現代社会に戸惑う新左衛門。しかし、持ち前の侍魂と剣術の腕前を活かし、彼は時代劇映画の「斬られ役」として、現代で生きていくことを決意します。
刀を振り回し、現代社会に馴染もうと奮闘する新左衛門の姿は、時にコミカルで、時に感動的。「侍タイムスリッパー」は、時代劇と現代劇、コメディとシリアス、そしてアクションと人間ドラマが絶妙に融合した、全く新しいタイプの時代劇映画といえます。
ヒットの理由1:斬新な設定と意外な展開
「侍タイムスリッパー」のヒットの理由の一つに、斬新な設定と意外な展開が挙げられます。
まず、タイムスリップ×時代劇×コメディという組み合わせ自体が斬新です。侍が現代にタイムスリップするという設定は個人的には映画の題材としては見たことがありません、「侍タイムスリッパー」では、その侍が時代劇映画の撮影所で斬られ役として働くことになるという、さらにユニークな展開が待ち受けています。この設定は、観客の好奇心を刺激し、映画の世界に引き込む大きな要因となっています。
また、「カメラを止めるな!」を彷彿とさせる展開も、観客を惹きつけるポイントと思います。「カメラを止めるな!」は、ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが現れるという、斬新な設定と予想外の展開で話題となった作品です。「侍タイムスリッパー」も同様に、時代劇映画の撮影現場に本物の侍が現れるという設定で、様々なハプニングやトラブルが起こり、観客を飽きさせません。
さらに、ストーリー全体に散りばめられた伏線も見逃せません。一見、何気ないシーンやセリフが、物語の後半で重要な意味を持つことが明らかになり、観客は驚きと感動を味わうことができます。
このように、「侍タイムスリッパー」は、斬新な設定と意外な展開によって、観客を飽きさせない、エンターテイメント性の高い作品に仕上がっています。
ヒットの理由2:時代劇へのリスペクトと愛
「侍タイムスリッパー」が多くの観客の心を掴んだ理由の一つに、時代劇への深いリスペクトと愛が挙げられます。
監督・安田淳一氏は、時代劇に造詣が深く、幼い頃から時代劇を見て育ち、その魅力に惹かれてきたそうです。その想いは、「侍タイムスリッパー」の制作にも強く反映されています。
時代劇へのこだわり
時代考証: 衣装や小道具、セットなど、細部にわたって時代考証を徹底し、リアリティのある時代劇の世界観を再現しています。
殺陣: 侍の動きや剣戟の美しさを追求し、迫力満点の殺陣シーンを作り上げています。
言葉遣い: 登場人物たちのセリフは、現代劇のような砕けたものではなく、時代劇らしい丁寧な言葉遣いを意識しています。
音楽: 時代劇の雰囲気に合った、壮大な音楽を使用しています。
東映京都撮影所での撮影
「侍タイムスリッパー」は、時代劇の聖地とも言える東映京都撮影所で撮影されました。撮影所内のオープンセットやスタジオを利用することで、よりリアルな時代劇の世界観を表現することに成功しています。また、東映京都撮影所で働くスタッフたちの協力も得ながら、映画制作が行われたそうです。時代劇制作の現場を間近で見ることができたことは、監督やキャストにとって貴重な経験となり、作品にも良い影響を与えていると言えるでしょう。
斬られ役へのオマージュ
「侍タイムスリッパー」は、時代劇映画には欠かせない存在である斬られ役へのオマージュも込められています。主人公の新左衛門は、現代にタイムスリップした後、斬られ役として時代劇映画に出演することになります。
斬られ役は、主役を引き立てるために、華麗に斬られることを求められる、非常に難しい役どころです。映画の中では、斬られ役の苦労や葛藤、そしてプライドが丁寧に描かれており、観客は斬られ役という存在に改めて敬意を抱くことでしょう。
このように、「侍タイムスリッパー」は、時代劇への深いリスペクトと愛によって作られた作品です。その想いは、映画の細部にまで宿っており、時代劇ファンはもちろん、時代劇に馴染みのない人にも、時代劇の魅力を再認識させてくれるでしょう。
ヒットの理由3:共感を呼ぶキャラクター
「侍タイムスリッパー」のヒットを支えるもう一つの柱は、共感を呼ぶ魅力的なキャラクターたちです。
主人公・高坂新左衛門
主人公・高坂新左衛門は、幕末の会津藩士でありながら、現代にタイムスリップし、時代劇映画の斬られ役として奮闘する侍です。一見すると時代錯誤なキャラクターですが、彼の行動や言動には、現代人が共感できる要素がたくさん詰まっているのです。
真面目: 新左衛門は、生真面目で責任感が強く、どんな仕事にも真剣に取り組みます。斬られ役という、一見地味な仕事にも誇りを持って取り組む姿は、多くの人の共感を呼ぶでしょう。
努力家: 剣術の腕前は一流ですが、現代社会の常識や文化には疎く、苦労しながらも懸命に新しい環境に適応しようと努力します。彼の努力する姿は、観る人に勇気を与えてくれるかもしれません。
純粋: 新左衛門は、現代社会の汚い部分や複雑な人間関係に戸惑いながらも、純粋な心を失いません。彼のまっすぐな生き方は、現代社会に疲れた人々の心を癒してくれるでしょう。
ユーモア: 真面目な性格の一方で、お茶目でユーモアのある一面も持ち合わせています。現代の文化に戸惑う姿や、コミカルな言動は、観客を笑わせてくれます。彼が現代のテレビ番組やショートケーキに驚くシーンは笑いを誘います。
*実は安田監督は「男はつらいよ」が大好きだそうで、「男はつらいよ」をイメージしたようなシーンがいくつも出てきます。
このように、新左衛門は、真面目で努力家、そして純粋でユーモアのある、魅力的なキャラクターです。彼のひたむきな姿や、困難に立ち向かう勇気は、現代社会を生きる私たちに、大切な何かを思い出させてくれるのかもしれません。
さらに私は主人公のまさに侍顔が何の違和感もなかったのはキャスティングのうまさを感じます。しかも、誰一人有名俳優が出ていないのにヒットしているのは立派です。
個性豊かな脇役たち
新左衛門だけでなく、彼を取り巻く脇役たちも魅力的です。
敵役:この映画での高坂の敵役・風見が強烈な個性で主役を引き立てます。実は風見には高坂も驚く意外な過去があったのです。
映画監督: 熱血漢で、時代劇への愛が強い監督。新左衛門の才能を認め、彼を斬られ役として起用します。
ベテラン俳優: 斬られ役のベテラン俳優。新左衛門に斬られ役の心得を教えます。
助監督: この映画のヒロインである山本優子(沙倉ゆうの)は実際にこの映画のアシスタントもやっているスタッフの一人でもあります。
ヒットの理由4:口コミによる拡散
「侍タイムスリッパー」の異例の大ヒットは、従来の映画の宣伝方法とは異なる、口コミによる拡散によるところが大きいと言えるでしょう。現代において、映画のヒットにはSNSでの口コミが大きな影響力を持つことは周知の事実です。「侍タイムスリッパー」は、まさにこの口コミの力を最大限に活かした好例と言えるかもしれません。
SNSでの口コミ効果
公開当初は1館のみ(池袋シネマ・ロサ)の限定公開だった「侍タイムスリッパー」ですが、映画を観た人々がTwitterなどのSNSで感想を発信し始めると、瞬く間に話題となりました。
「#侍タイムスリッパー」というハッシュタグと共に、
「予想以上に面白かった!」「笑って泣ける!」「時代劇なのに斬新!」「斬られ役への愛を感じる!」「ラストシーンに感動!」
といった感想が次々と投稿され、拡散されていきました。
特に、
- 「カメラを止めるな!」を彷彿とさせる展開
- 斬られ役という裏方へのリスペクト
- 時代劇ファンも納得の本格的な殺陣
といった点が、多くの映画ファンの心を掴み、口コミを加速させました。
聖地巡礼で映画の世界へ!「侍タイ」ロケ地ガイド
映画「侍タイムスリッパー」の舞台となったのは、主に京都府や滋賀県になります。劇中に登場する印象的なロケーションの数々は、実際に訪れることができる場所も多いようです。
映画の世界観を肌で感じられる、「侍タイ」のロケ地(聖地)を巡る旅にこの秋出かけるのもありかも。
東映京都撮影所
時代劇ファンなら一度は訪れたい、東映京都撮影所。「侍タイムスリッパー」では、現代のシーンの主要な舞台として登場します。主人公・新左衛門が斬られ役として働く撮影所や、時代劇のセットを見学することができます。映画の世界に迷い込んだような、特別な体験ができるかもしれません。
妙心寺 涅槃堂
重要文化財にも指定されている、妙心寺 涅槃堂。タイムスリップした新左衛門が現代の僧侶と出会う場所として、映画の中でも印象的に描かれています。厳かな雰囲気の漂う歴史的な建造物で、映画のシーンを思い出しながら、静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
油日神社(滋賀県)
クライマックスの最後の決闘のシーンにも採用されてます。緑豊かな自然に囲まれた、神秘的な雰囲気の神社です。映画のワンシーンを思い浮かべながら、参拝してみるのも良いですね。
その他にも…
大覚寺: 美しい庭園で知られる大覚寺。
祇王寺: 苔むす庭園が美しい、静かな佇まいの祇王寺。
下鴨神社: 世界遺産にも登録されている、歴史ある神社。
亀岡市の龍譚寺:雷に撃たれる場面はこの門前
ムツミ病院介護医療院: 主人公が入院していた病院として登場しています。
これらの場所も、映画のシーンに登場します。これからの旅のシーズンに京都観光と合わせて、映画のロケ地を巡る旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめと感想
個人的には「カメ止め」ほどの斬新さと驚きはありませんでしたが今の時代に忖度した作りにはなっていたのがヒットした何よりの要因かもしれません。主役の山口馬木也は大河ドラマの常連らしく殺陣に何の違和感もないのはさすがでした。でも、現代の世界に慣れてきてもずっと無精ヒゲのまんまはちょっぴり違和感が。
また、他の侍のタイムスリップに時間差があるのはストーリーとして面白いと思いました。そこで一瞬ターミネーターを思い出しました。
ただ、細かいディテールでは結構お寒いギャグや今時使わないもの(ベータカムやガラケー)が出ていてあっけにとられる部分もありました。流石に今どきガラケー使う撮影隊なんていないでしょ・・と思いましたが、実はこの映画の現代は2007年の設定ですのでガラケーは決して間違いではないのです。
スペースものSFがだんだん現実の世界となりつつある現代で今でも映画で描ける未知の世界はタイムトラベルものかもしれません。