『ルックバック』感動のストーリーと美しい映像。ズバ抜けた青春アニメを見るべき理由
今回はアニメを取り上げます。それも日本のアニメです。わたしは日頃から下手な実写映画より日本のアニメ映画の方がよっぽど完成度が高いと思ってますが、このアニメがまさにそれです。実は前日に「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ 」(この映画は下手な実写映画ではありません)を見たのですがこの映画の出来がかすむほど「ルックバック」は、ずば抜けて素晴らしいです。ハリウッドのアカデミー賞でいえば間違いなく作品賞とわたしは断言します。この映画に感動しない人がいたらその理由を聞きたいほどです。
とにかく上映時間が58分しかないのです。見る前は58分とは映画として短かすぎると思ってましたが、実際見てみると2時間映画を見たような濃密な完成度です。無駄なカットが何一つないし、テンポもちょうどいい。しかも胸を熱くします。アニメ制作者に「アッパレ!」をあげたいほどです。
主要なプロットと登場人物
主要なプロット
映画『ルックバック』は、漫画を描くことに情熱を注ぐ二人の少女、藤野と京本の友情と成長を描いています。
物語は、小学4年の藤野がクラス新聞の漫画担当として脚光を浴びるところから始まります。彼女は、学校で唯一の漫画家として人気を集めますが、ある日自分よりすごい漫画オタクの不登校者京本に学校新聞で出会います。藤本は愕然とします。京本の漫画は大してストーリーはないのですがその作画力が子供っぽくないのです。そして、藤野はふとしたことから京本の自宅に行きます。そこでまた驚きます。自宅の廊下にはドローイングノートが所狭しと並べられていたのです。そこで京本と運命の出会いをします。
そして、京本は不登校者だから性格が悪いと思いきや、全く違う。もう、ここで観客は裏切られます(いい意味)。むしろ京本は藤野に憧れていたのです。そのうち二人で漫画を書き続けます。引きこもりがちな京本が描いた漫画を見たことがきっかけで藤野は、自分ももっと上手くなりたいと努力を重ねます。
彼女たちの交流は、やがて強い友情へと発展し、お互いにとって大切な存在となります。そして、一緒に漫画を描くことを決意します。ついにはプロデビュー!しかし、ある日二人の友情が崩れる思わぬ出来事が・・・というもの。ある意味二転三転のストーリーも楽しめます。
登場人物
藤野: 主人公の一人で、小学校時代から漫画を描くことに情熱を持つ少女。明るく活発な性格で、京本との出会いを通じてさらに絵の技術を磨きます。プロの漫画家として成功を収めますが、京本との出会いを機に再び彼女との絆を深めます。
京本: 引きこもりがちな少女で、藤野の同級生。小学生にしては驚くべき作画才能を待ちますが、家庭の事情で絵を描くことを諦めざるを得ない。しかし、藤野との友情を通じて再び絵に対する情熱を取り戻します。
お話の舞台はおそらく原作者の出身地である秋田の郊外と思われます。まだ田んぼなどが残っている、いわゆる田舎。標準語で喋る藤野と違い、京本は東北訛りで喋るのですが逆にそれが純朴な性格を感じさせるのです。ここら辺は演出のうまさかと思われます。また、この映画には普通出てきそうな両親などの大人は出てきません。出てくるのは先生だけ。つまり、話を進める上で不必要な設定が全て省かれているので、逆に観客は二人のお話に集中できるのだと思います。
『ルックバック』は、友情や成長、夢の追求といったテーマを織り交ぜた感動的な物語であり、登場キャラクターたちの心の葛藤と絆が丁寧に描かれています。この作品を通じて、観客は自身の夢や友情の大切さを再認識することができると思います。実際、わたしもそうでした。
見るべき理由①: 感動的な物語と登場人物の深い描写
『ルックバック』は、絵を描くことが好きな二人の少女、藤野と京本の友情と成長を描く物語です。彼女たちが共に過ごす時間を通じて、それぞれの夢と絆を再確認し、成長していく様子が感動的に描かれています。
主人公の藤野と京本は、それぞれが異なる背景と個性を持ちながらも、互いに影響し合い、支え合う存在です。特に、京本が藤野に与える影響と、その後の藤野の成長は感動的なポイントです。
見るべき理由②: 美しい映像とアニメーション技術
『ルックバック』は、美しい背景描写と繊細なキャラクターデザインが魅力です。細部まで描かれた風景や日常のシーンは、観る者の目を楽しませ、物語に引き込む力を持っています。特に星が輝く夜空や田舎の田園風景など感動的とも言える映像です。
また、藤本タツキの原作の繊細なタッチをそのままアニメーションで再現する技術は見事というほかありません。動きの滑らかさや色彩の使い方が非常に高品質であり、視覚的な魅力が存分に楽しめます。
見るべき理由③: 感情を揺さぶるエモーショナルなシーン
物語の中には感動的なシーンが多く、観る者の心を強く揺さぶります。例えば、藤野が京本の自宅である4コマ漫画を発見するシーンや、二人が漫画を描く決意を固めるシーンなどが挙げられます。特にラスト、大人になってからの藤野が京本の部屋に入ったシーンが感動的です。
友情、夢の追求、そして成長というテーマを通じて、視聴者に深い感動を与えます。特に、終盤過去の出来事を振り返り、それを基に未来を築くというメッセージは、多くの人々に共感を呼び起こすはずです。
タイトルの意味
タイトルの「ルックバック」という言葉には実は深い意味があるようです。話の中には直接「ルックバック 」というセリフのようなものは出てきません。ただ、それをイメージするセリフやモチーフはいろいろ出てきます。初めてふたりが出会ったときに藤野が京本に書いたサインの場所は、京本の背中(バック)でした。また、藤野が「京本も私の背中をみて成長するんだな~」という発言をしたり、また、最後には藤野が京本との過去の出来事を思い返すシーンもあります。それも過去を振り返る(ルックバック) です。でも、本来の意味は原作者藤本タツキ氏の言葉にあるのかもしれません。
「背中を見せたかった」
「マンガ制作は楽しいことばかりじゃない。淡々とドラマもなく単調であるということを知って欲しかった」
原作にも劇場アニメでも、机に向かうシーンがたくさん出てきます。それが最も大きなタイトルの意味のようです。何かに真剣に向きあっている、その後ろ姿には映画を見ている人にも伝わるのです。そういう意味でも今までにない斬新なアニメだと言えます。
まとめ
とにかく、『ルックバック』は、感動的なストーリー、美しい映像、そしてエモーショナルなシーンが融合した、青春アニメの傑作と断言できます。
この作品を観ることで、友情の大切さや夢を追い続けることの素晴らしさを大人でも再確認することができます。藤本タツキ氏の原作を見事にアニメーション化したこの映画は、アニメファンなら必見の作品です。
また、この映画の劇中音楽、つまり、サウンドトラックもいいです。観客の胸を揺さぶる音楽や歌が揃ってます。
ただ、こんな素晴らしいアニメが都会でも上映館が少なめなのがもったいない。ぜひ全国の映画館で上映してほしいと思います。そして、この映画は最近の映画では珍しく特別料金統一で一切の値引きがありませんが入場者特典がいろいろつきますので嬉しいです。