快挙!賞賛!大炎上!多様性の時代の第96回アカデミー賞授賞式

記憶と記録に残る第96回アカデミー賞授賞式

今年は日本人にとっては記憶と記録に残るアカデミー賞授賞式になったのではないでしょうか。
なぜなら視覚効果賞長編アニメ映画賞でのダブル受賞は未だかつてなかったことだからです。
しかも、ゴジラと宮崎駿アニメはもうこれ以上ないくらいの強力な日本映画のカテゴリーです。
ただ、これも多様性の文化を入れ始め、変化してきているアカデミー賞のシステムがあってこそだと思われます。

そもそもアカデミー賞とは
主催団体は「映画芸術科学アカデミー」で、ここの会員が無記名で投票を行うことによって、ノミネートから最終段階の受賞者までを選出しています。会員は世界中に1万人以上いるそうです。すごいです。
ちなみに受賞による賞金などはなく、与えられるのはオスカー像と輝かしい名誉のみ。その名誉のためにスタッフ、キャストは日夜死に物狂いでいい映画を世に出そうと努力しています。

また、アカデミー賞は、アメリカ映画の発展を目指す映画賞なので、アメリカ以外の国の映画は、応募条件をクリアする必要があり、1日3回以上、かつ1週間以上、劇場で公開されるというのが最低条件だそうです。
ただ、社会の多様性が反映され、2020年より、マイノリティーも含めて公平に選出されるようになってきました。ここ最近、日本も含めてアジア圏の作品やアジアの俳優が選ばれるようになったのもそういう理由からと思われます。

快挙!視覚効果賞受賞

日本人にとっての快挙は何と言っても「ゴジラ-1.0」の視覚効果賞受賞でしょう。日本だけでなくアジアとして初めての快挙と言えます。選ばれた理由は、VFXスタッフの人数の少なさと低予算であれだけの特撮映画を製作したのはハリウッドでも脅威と言われていました。予算規模で圧倒的に勝るハリウッド作品と肩を並べるほどのクオリティーと評判になっていたからです。
ちなみに「ゴジラ-1.0」はアメリカで2千以上の映画館で上映されたこともあって邦画での現地の累計興行収入歴代1位を記録しました。

視覚効果賞受賞

山崎貴監督は受賞スピーチでハリウッド以外で映画製作に取り組んでいるアーティストのみなさん、これはハリウッドが私たちの作品を見てくれている。誰にもチャンスがあることの証だと思います」とコメント。クリエイターたちにエールを送りました。

宮崎駿監督(83)の「君たちはどう生きるか」長編アニメ映画賞受賞。北米で昨年12月に公開され、初週の週末興行成績で1位になるなど、高く評価されていました。

7部門受賞の快挙
作品賞は、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が受賞。ノーラン監督作が作品賞にノミネートされるのは、『インセプション』『ダンケルク』に続いて今回で3度目。ついに作品賞の受賞を果たした。また同作は、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、編集賞、作曲賞、全7部門受賞を成し遂げ、まさに今年のアカデミー賞の快挙です。

主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィー

映画は第2次世界大戦下。アメリカでマンハッタン計画が極秘裏に立ちあげられる。参加した天才科学者J・R・オッペンハイマーは、優秀な科学者を率いて、原子爆弾の開発に成功します。しかし、投下された原子爆弾が引き起こした惨状を知った彼は、深い苦悩を抱えるというストーリー。

戦争を直接描かずにその恐ろしさを描いたということでに高い評価が集まりました。ちなみにアカデミー賞の歴史で7部門受賞は、『戦場にかける橋』、『アラビアのロレンス』、『シンドラーのリスト』など12作品で、いずれも映画史に残る傑作ばかりです。つまりアカデミー賞の会員は『オッペンハイマー』も傑作のひとつだと高く評価したことが分かります。

私はまだ未鑑賞なので確かなことは言えませんが映像的にすごいと話題なのが臨界実験のシーンがあります。CGや音響効果を駆使し、圧倒的な迫力を描いてるようです。公開が待ち遠しいです。

賞賛!ジミー・キンメル

今年の司会はアカデミー授賞式司会4度目のジミー・キンメル。4回目ということで非常に落ちついていて、コメントも危うくなりそうでいて危なげない、逆に納得してしまう、名司会だったと思われます。

特に大ヒット映画『バービー』のグレタ・ガーウィグとマーゴット・ロビーがそれぞれ監督賞と主演女優賞にノミネートされなかったことについて、それぞれ二人を持ち上げていたことはうまいと思いました。会場の出席者も拍手を送っていました。私自身は映画そのものより彼の司会としての技量に賞賛を与えたいです。まさにアッパレです。

2度目のオスカー ビリー・アイリッシュ
受賞者としての賞賛はやはりビリー・アイリッシュでしょう。映画『007/ノー・タイム・トゥー・ダイ』に続いて2度目の受賞です。彼女、歌唱が素晴らしいのは言うまでもないことですが衣装が奇抜なのも私には印象的でした。今年はまるで日本の女子高の制服みたいな衣装で驚きました。

アカデミーのみなさん、本当にありがとう。こんなことが起きるなんて思っていませんでした。とても幸運で光栄に思っています、グレタ、どこ? 愛してる!」と監督のグレタ・ガーウィグに感謝の言葉を言ったのはちゃんと忖度も忘れていません。

作品賞発表時の珍事
授賞式の最後、みんなが待ちに待った作品賞発表の時、珍事が起きました。それは登壇したアル・パチーノが作品賞を発表する時、本来やるべきノミネート作品のタイトル紹介をすっ飛ばし、いきなり封筒を開けて「オッペンハイマー」と言ったのです。この時は私も驚きました。

作品賞発表のアル・パチーノ

おいおい、アル・パチーノじいさんもついに認知症か?会場もざわついてました。
オーラスにまたやったミステイク?と思ったら、なんとこれはれっきとした演出だったのです。

アル・パチーノはこの時の発表の賛否についてその後こうコメントしています。
「これだけは明確にしたい。省略したのは、私の意図ではない。授賞式中にすでに10作品が紹介されているから、2回も紹介する必要はないというプロデューサー陣の決断だ」と説明。

各部門の合間には、例年のように作品賞候補の映画が1作ずつ紹介されており、演出チームは時間短縮を図ったという説明です。個人的にはこの判断に賞賛を送りたいです。確かにもう1回他のノミネート作品を確認したいという気持ちはありますがいちいち10作品の説明を式の最終に長々と聞くのは退屈という気持ちもあります。
授賞式の演出担当もその事実を認めてます。演出担当はこうコメントしています。
「私たちの判断で混乱させてしまいました。でも、それが生放送の楽しみです」と。賢いリアクションです。

大炎上!助演男優賞受賞

授賞式では毎年大炎上ネタがあります。なんてったって全世界に放映されてますからね。どこかの国民には気にならなくてもどこかの国民には不愉快だ、許せない的な行動や発言が出てきます。その役者自身は他意はなくてもハタから見ればおかしいなんてことがよくあります。

今年は何と言っても助演男優賞受賞のロバート・ダウニー・Jrがとった行動です。
プレゼンターでもあるキー・ホイ・クアンをトロフィーだけ受け取って素通りしたのです。
文字通りの”空気扱い”。個人的にも見ていて気分がよくなかったです。

助演男優賞受賞のロバート・ダウニー・Jr

プレゼンターを務めたアジア系俳優のキー・ホイ・クアンを無視したと物議を醸し、SNSで炎上してしまったのです。。
「前年の受賞者に対して軽蔑的」「満面の笑みでトロフィーを手渡したのに、あからさまに無視した。大スターなのに謙虚さや品格はゼロ」「意図的であったかどうかは分からないが、クールじゃない」などの声が出て、まさに大炎上。
本人はたとえ無意識だったとしてもキー・ホイ・クアンに対して明らかに失礼です。しかも、全世界のファンが見てる前で。その後の受賞コメントで何を言っても無意味という感じです。
彼はその後コメントを今のところ出してないので、どういうつもりでああいう行動をとったのか気になります。

多様性の時代のアカデミー賞

今年は多様性の時代を感じさせる受賞者がいました。それは長編ドキュメンタリー賞を受賞した
ウクライナのミスティスラフ・チェルノフ監督。映画はロシアのウクライナ侵攻をそのまま映像に収めた映画『実録 マリウポリの20日間』というドキュメンタリー。AP通信の記者ミスティスラフ・チェルノフ自身が同地の惨状を記録したものです。

オスカー像を受け取ったチェルノフ氏は「ウクライナ史上初のオスカーを光栄に思う」と述べた上で

「このような映画は作りたくなかった」と。まさに真に迫る言葉です。
映画を作った本人が本当は作りたくなかったと。このようなコメントを言った受賞者は未だかつていなかったと思います。一歩間違えれば政治的な発言になりそうですが、彼が命がけで撮ったドキュメンタリーはアカデミー賞を超える価値があります。
「この賞と引き換えに事実を変えられるならロシアのウクライナ侵攻をなかったことにしたい」
この時会場から拍手が起きます。
「命を捧げたマリウポリの人々は私たちの記憶に残ります。なぜなら映画は記憶となり記憶は歴史を作るからです
大スターの形だけの感謝のコメントよりも何十倍も光り輝いています。
これからもアカデミー賞は、このような時代を反映するような映画に光を当てて欲しいと思います。

ところで今年は信じられないような出席者が居ました。会場には特別な観客が(もちろん演出です)

メッシ君

それは今回の作品賞にもノミネートされてた映画『落下の解剖学』で介助犬のスヌープを演じた
ボーダーコリーのメッシ君。

介助犬のスヌープを演じたボーダーコリーのメッシ君。

彼はその演技力でカンヌ国際映画祭でパルムドッグ賞も受賞していた名優です。えっ?ほんとかね、と、思ったら本当でした。↓
 パルムドッグ賞はカンヌ国際映画祭で優秀な演技を披露した犬に贈られる賞。2001年にトビー・ローズに
 よって企画され、以来毎年、映画祭で上映された映画の中で優秀な演技を披露した1匹またはグループの実写
 もしくはアニメーションの犬に “PALM DOG” と記された革の首輪が贈られている(ウィキペディアより)

私も彼の演技を映画で見たのですが、冗談でなく素晴らしい演技を見せていました。

まとめ

紅白歌合戦が日本のヒット曲の一年の締めくくりなら、映画ファンの一年の締めくくりは何と言ってもアカデミー賞授賞式です。私はここ10年以上、紅白歌合戦は見ることを忘れても(笑)
アカデミー賞授賞式はwowowで必ず見ています。別に宣伝するつもりはないですがwowowはそのために受信契約をしていると言ってもいいくらいです。

その年その年で舞台の演出を変えてきているアカデミー賞授賞式。今年は司会といい舞台の演出といい結構見やすかったと思います。とにかく、日本人にとってハリウッドスターの素顔が見れるのはこのアカデミー賞授賞式以外ありません。

多様性の時代に応じたアカデミー賞は、今まで以上に注目され、讃えられるべきものです。第96回アカデミー賞は、その瞬間を象徴するようなエポックメイキングなイベントとなりました。映画界がますます多様化し、さまざまな人々の物語や視点が輝きを放ち始めた今、このような時代にあって、アカデミー賞がそれぞれの映画の輝きを受け入れ、賞賛することは極めて重要です。
さらに、多様性の時代に応じた、受賞スピーチやイベント全体でのメッセージにも現れています。受賞者たちは、多様性の重要性を強調し、これらの価値を称賛しました。彼らの言葉は、映画業界だけでなく世界中の人々に希望とインスピレーションを与えることでしょう。

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