『変な家』『オーメン ザ・ファースト』今、にわかに蘇るホラー映画ブームの背景

2024 ホラー映画ブーム到来!

2024年、まだ3ヶ月ほどしか経っていませんが日本の映画界では様々なジャンルで目覚ましい作品が生まれています。中でも特筆すべきなのがホラー映画の盛り上がりです。近年低迷が続いていたホラー映画界に、待望のブームが日本でも訪れているようです。

その兆候が現れたのは、3月15日にに公開された不動産ホラー映画『変な家』です。本作は、大ヒットの原作で人気に火が付き、現在のところ興行収入30億円を超える大ヒットを記録しています。この成功は、ホラー映画ファンのみならず、業界関係者にも大きな衝撃を与えています。
さらに追い打ちをかけるように、4月にはハリウッド製ホラー映画『オーメン:ザ・ファースト』が日米同時公開されました。こちらもヒットとなり、世界中で話題を集めています。アメリカではランキング4位。日本でも現在8位で健闘しています。

「変な家」は、不動産ミステリーと銘打ってるように不動産の間取りをめぐる話で一見ホラーとは関係ないようですが、話が進むと昔ながらのおどろおどろしい家族と儀式がテーマの和製ホラーに転じてゆきます。それは言ってみれば「犬神家の一族」令和版。

一方、『オーメン:ザ・ファースト』は、1976年に公開された名作ホラー「オーメン」の前日譚にあたる作品で、悪魔の子誕生という衝撃的なテーマを継承しつつ、現代社会における宗教や信仰に対するメッセージも込められています。
このように、2作品は懐かしさと新しさを巧みに融合させたことで、幅広い層の観客を魅了することに成功したと言えます。

近年、ホラー映画は社会派や心理ホラーなど、様々なテーマを取り入れた作品が増えてきました。 しかし、観客は根っからの恐怖体験を求めていたのかもしれません。『変な家』と『オーメン:ザ・ファースト』のヒットは、ホラー映画が本来持つ恐怖を追求することの重要性を改めて示したと言えます。

『変な家』ストーリー

*この後、多少ネタバレを含んだ文章になります。ご注意ください。

雨宮(間宮祥太朗)は、オカルト専門の動画クリエイター。ある日、マネージャーから引越し予定先の一軒家の間取り図が奇妙だと相談されます。その間取り図を見た雨宮は、何かがおかしいと感じ、ミステリー愛好家の建築士栗原(佐藤二朗)に相談します。

動画クリエイター 雨宮

栗原は、間取り図の奇妙な点から、その家に恐ろしい秘密が隠されているのではないかと推測します。雨宮は、栗原の助言を受け、その家を調査することにします。調査を進めるうちに、驚愕の事実を知ります。さらに、その家には、古くからの呪いがかけられているという噂も浮上します。

雨宮は、その家の真実を解き明かすため、様々な挑戦をしていきます。そして、ついに、その家に隠された恐ろしい秘密にたどり着きます。
その秘密とは…まさにそこには現代の”犬神家の一族”が絡んでいたのです。

halpon

見どころはココ !

その”変な家”にまつわる一族の古い家を探検するところから、おどろおどろしい片渕家の面々と相対し、恐ろしい秘密を告げられるところに唖然です。

『オーメン:ザ・ファースト』ストーリー

新しい人生を歩み始めたアメリカ人女性マーガレットは、教会で奉仕生活を行うために、イタリアのローマに到着します。しかし、次第に彼女は悪魔の子を生みだそうとする司祭ローレンスや教会の陰謀を知ってしまいます。

マーガレット

それは恐怖で人々を支配すべく悪の化身を意図的に誕生させようとする教会の恐るべき陰謀を彼女は知ってしまうのです。その後教会側のおぞましい体質に巻きこまれていき、ラストは驚愕の事実を目にします。なんと、全て教会側がマーガレットを陥れる罠だったのです。
そして、悪魔の子を産む運命にあったのは自分自身だということを知ります。そして、その時が来ます。それは6月6日!意外なことにマーガレットが産んだのはなんと双子だったのです。
一人は男の子。一人は女の子。男の子はダミアンに。そして、女の子はいったいどのように育つのか、続編に含みを持たすような終わり方で幕を閉じます。

司祭ローレンス

時代設定は1971年。「オーメン」が1976年なのでそこに合わせてあります。場所がイタリアというのも古い体質の教会というのとイメージが合います。ちなみに「エクソシスト」は1973年公開。「キャリー」が「オーメン」と同じ1976年。まさに1970年代は名作ホラー全盛の頃です。

halpon

見どころはココ!

 悪魔の子を宿した主人公が6月6日になり、突然悪魔がのり移ったように狂いだすネル・タイガー・フリーの怪演がすごいです。

ネル・タイガー・フリーが力演

古典ホラーの復活

昨年あたりからアメリカ映画界では古典的なホラーが復活しています。それは昨年12月公開の『エクソシスト 信じる者』、そして、今回の『オーメン ザ・ファースト』『エクソシスト 信じる者』は北米で昨年10月に公開され、文字通り大ヒットしました。
古典ホラーは、常に観客の興味を引きつけ、恐怖と緊張を煽る不朽のジャンルと言えます。近年、人々は、古典的なホラーにエッセンスやスリルを求め、その魅力に再び惹かれているのかもしれません。この復活の一例が、今回の『オーメン ザ・ファースト』であり、その復活の中で、我々は古典的なホラーの魅力を再発見し、新たな恐怖と興奮を体験しています。この作品は、古典ホラーの原点に立ち戻りながらも、現代の視点から新たな視点を提供し、恐怖の本質に迫っています。

『オーメン』へのオマージュ

この映画には古典であり、原点である『オーメン』へのオマージュのようなシーンや音楽が満載です。そういうシーンを見つけながら見るのも楽しみの一つです。例えば、冒頭のガラスの破片が神父に降ってくるのは『オーメン』の有名な避雷針串刺しのシーンのオマージュと思われます。

映画こぼれ話

ここで映画こぼれ話を。ホラー映画の場合、スタッフやキャストにも実際に不吉な出来事が起こるとよく言いますが、そんな奇妙な出来事が「オーメン:ザ・ファースト」の撮影中にも起こっていたそうです。

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キャストにも実際に奇妙な出来事が!

『オーメン』と本作の両方に登場する重要なキャラクター、ブレナン神父を演じたラルフ・アイネソンについて、スティーブンソン監督は「彼はリハーサルをする予定だったんだけど、その直前に犬に襲われて来られなかったの。さらに彼の娘は広場で、急降下してきたカラスに襲われたわ」と、ハプニングが相次いだという。

 また、本作では主人公マーガレット役を演じたネル・タイガー・フリーは「私がローマに向かう飛行機が雷に打たれたの。(映画に関わっている)ほかの人の飛行機も雷に撃たれたわ」と、76年当時と同じような落雷事故に遭ったことを告白。いや〜映画が完成してよかったです。

ところで主役のネル・タイガー・フリーは映画の中では黒髪の女性ですが実は・・・

halpon

カツラだった!

本人はブロンドだったのです。黒髪とブロンドではずいぶんイメージが違います。いえ、本人に聞いたわけではないのでこちらがカツラかもしれませんが・・・

主演のネル・タイガー・フリー

2024 ホラー映画ブームの背景

ブームには何らかの理由があります。その理由を考えてみました。

  1. ホラー映画の魅力の再発見
    • ホラー映画は、不安や恐怖を体験することで、現実世界からの一時的な逃避を提供します。もちろん、映画媒体そのものが何らかの逃避を意味しますが、ホラー映画は特にその意味が強いと思います。
    • さらに、技術の進化により、よりリアルな恐怖体験が可能になっている。
  2. ホラー映画の新たなアプローチ
    • 近年のホラー映画は、単なるジャンプスケア(観客を驚かせ恐がらせるテクニック)だけでなく、深い心理的恐怖や社会的なテーマを掘り下げる作品が増えてきています。
    • 「変な家」は不動産を絡めたアプローチ。「オーメン:ザ・ファースト」は原点回帰などで、従来のホラー映画の枠を超えたアプローチで注目されます。
  3. パンデミックの影響
    • コロナのパンデミックの影響により、人々はストレスや不安を感じやすくなりました。
    • このような状況下で、ホラー映画が人々の心理的なニーズに応えてることもあります。

ホラー映画がファンに愛される理由

ホラー映画は、観客に恐怖や不快感を与える映画ジャンルです。しかし、その一方で、熱狂的なファンを持つジャンルでもあります。なぜホラー映画はファンに愛されるのか、これも理由を考えて見ます。

 1. 恐怖によるカタルシス

◎ホラー映画は、観客に恐怖を与えることで一種のカタルシスをもたらします。日常生活では味わえない恐怖を体験することで、ストレスを発散したり、緊張感を高めたりすることができます。

 2. 安心感の獲得

◎ホラー映画では、主人公が恐怖に立ち向かい、克服するストーリーが描かれることが多いです。観客は主人公の活躍を通して、自分自身の不安や恐怖を克服する力を得ることができます。

 3. 非日常的な体験

◎ホラー映画は、観客を非日常的な世界へと誘います。現実世界ではありえないような出来事を体験することで、 退屈な日常生活から解放され、新鮮な気持ちになることができます。

今後のホラー映画:更なる進化へ

「変な家」と「オーメン:ザ・ファースト」のヒットを受け、ホラー映画界は再び活気を取り戻しています。今後のホラー映画がどのように進化していくのか、いくつかの可能性を考えてみました。

1. 技術革新による新たな恐怖体験

◎VRやARなどの技術を活用したホラー映画が登場するかもしれません。これらの技術を使えば、観客はこれまで以上にリアルな恐怖体験を味わうことができるからです。

2. テーマの多様化
◎近年では、社会派や心理ホラーなど、様々なテーマを取り入れたホラー映画が海外でも増えています。今後も、ホラー映画のテーマはますます多様化していくことが予想されます。例えば、環境問題や政治問題などを題材にしたホラー映画も出てくるかもしれません。

3. ホラー映画ファンの増加
◎「変な家」と「オーメン:ザ・ファースト」のヒットにより、ホラー映画ファンが確実に増えています。今後も、ホラー映画ファンの増加とともにホラー映画市場はますます拡大していくことが予想されます。

今年公開予定の主なホラー作品

今年も様々なホラー作品が公開予定です。

4月26日公開 キラー・ナマケモノ ホラーコメディ

5月10日公開予定 胸騒ぎ 米スタジオのブラムハウス製作、ジェームズ・マカヴォイ主演

6月7日公開予定 ナイトスイム 「ソウ」シリーズや「死霊館」シリーズの製作会社ジェームズ・ワンと「透明人間」のブラムハウス・プロダクションズが
        「M3GAN ミーガン」に続いてタッグを組んだホラー&スリラー。

6月21日公開予定 ザ・ウォッチャーズ M・ナイト・シャマラン監督の娘が長編初監督、脚本を務める。

6月28日公開予定 クワイエット・プレイス:DAY 1 音に反応する生命体による恐怖を描く「クワイエット・プレイス」シリーズの“1日目”が舞台のホラー

『変な家』『オーメン:ザ・ファースト』感想とまとめ〜続編の可能性

『変な家』について

ユーチューバーの手持ちカメラでそのおどろおどろしい家の中を見せるところは新鮮な見せ方でした。佐藤二朗の変人設計士は面白いですが結果的にはいつもの佐藤二朗的なキャラクターに戻っているのが笑えました。でも独特のキャラがこの映画を盛り上げてました。
片渕家の変人男を高嶋政伸がやってるとは思いませんでした。すごい変身メイクです。ドツボにハマるほど暗い女性を演じた川栄も新鮮でした。

原作のみならず、映画も大ヒット中ですから、続編の可能性はかなり高いのではないでしょうか。

『オーメン:ザ・ファースト』について

結論から言うとツッコミどころはありますが作品としてはまとまっています。
教会側の陰謀というストーリーは確かに新鮮で興味を持ちますが、悪魔と教会側との接点がはっきりしないのが残念です。

悪魔は「エクソシスト」などと違って全身も声も出てこず、ほとんど、手だけ(笑)。ただ、悪魔の化身として山犬?獣?が出て来ます。その獣もラストには教会側の人間に焼き殺されてしまいますので、一番怖いのは悪魔ではなく人間?
また、出産シーンに今どき珍しいボカシが入り、子供が見るわけでもないのにホラー映画にボカシというのが笑ってしまいます。多分、日本の配給側がボカシを入れたのでしょう。

衝撃のラストに関しては続編ができそうな気はしますが『オーメン』に主演した主演のグレゴリー・ペックがもうこの世にはいないので彼なしでストーリーを考えなくてはならないのが脚本としてかなり難易度がかなり高い気がします。でも、ぜひ、続編にチャレンジして欲しいです。

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