スターウォーズの精神も受け継ぐ『マッドマックス:フュリオサ』徹底解剖

荒野の大アクション活劇=復讐バトル!

「マッドマックス:フュリオサ」は、今や巨匠といわれるジョージ・ミラー監督によるマッドマックスシリーズの初めてのスピンオフ映画です。シリーズのファン待望のこの作品は「マッドマックス 怒りのデス・ロード(Mad Max: Fury Road)」で強烈な印象を残したフュリオサ(シャーリーズ・セロンが演じたキャラクター)に焦点を当て、彼女の背景と成長過程を描くことで、マッドマックスの世界観をさらに深めた作品です。

この映画をひと言で言うなら”荒野の大アクション活劇”です。時代は近未来ですが西部劇に置き換えても何の不思議もありません。フュリオサが母と恋人を死に追いやったディメンタスに復讐すること。そう、この映画は壮絶復讐バトルです。それがこの映画の要のストーリーで、そこにマッドマックスならではの複雑な要素が絡み合った映画です。

現代の巨匠、ジョージ・ミラー監督(なんと79歳!)は、独自のビジョンとスタイルで知られる映画作家であり、「マッドマックス」シリーズを通じて、過酷な未来世界を描き出すことに成功しており、本作でもその才能を遺憾なく発揮しています。加えてフュリオサというキャラクターの深い人間性とその背景にある物語が、映画全体の魅力を一層引き立てていると言えます。

この映画は、アクションとドラマの融合が実現された作品で、砂漠の視覚的な壮麗さと感情的な深みを兼ね備えていると言えます。観客は、フィオリサの過去の冒険と試練を通じて、彼女の強さと勇気を新たな視点で理解することができると思います。

狂気と美が交錯する砂漠。

「マッドマックス:フュリオサ」の本編冒頭は地球からオーストラリアの中心にズームイン。そう、舞台はオーストラリアの砂漠地帯です。狂気と美が交錯する砂漠が舞台です。
なので、砂漠、砂漠、砂漠。こんな美しい砂漠の映像を見たのは62年前の名作「アラビアのロレンス」以来です。映画のジャンルは違いますが、砂漠はこの映画の名脇役と断言します。もうまるで砂漠のど真ん中に観客も投げ込まれたような感覚です。だから、映画のカラートーンも茶褐色!それは映像の魔術師ともいわれる、ジョージ・ミラー監督ならではかもしれません。ちなみに映画のチラシもパンフも茶褐色トーンです。

パンフレット
チラシ

フィリオサの復讐物語

物語は、フィリオサがまだ戦士になる前の少女の頃。家族と共に平穏に暮らしていた時代から始まります。幼いフィリオサは「緑の地」と呼ばれる小さなコミュニティで生活していました。ある日、敵対する勢力でもあるディメンタスの部族に捕らえられてしまいます。フィリオサが拉致されたことを知った母親のメリーは誘拐したディメンタスの手下をバイクで執拗に追跡し、一人また一人、銃で狙撃します。このオープニングの追跡シーンは、まるで007シリーズのオープニングアクションシーンを彷彿とする、この映画の見どころの一つです。この時母親がフィリオサにこの映画の中でも最も印象的な言葉を発します。それは「星と共にあれ(stars be with you)」。

その後、母親はディメンタスに捕らえられ、磔にされてしまいます。これを見ていたフュリオサはディメンタスへの復讐を心に誓ったのです。このシーンはまるでローマによるキリスト教迫害をイメージしてるように思われます。

物語は、フィリオサがこの過酷な環境の中で成長し、自由を求めて脱出を計画する様子を描きます。その旅の途中で、彼女は荒れ果てた大地を支配する恐ろしい支配者、イモータン・ジョーの存在を知ります。ジョーの残虐さと支配に対する反発心が、彼女の内なる力を引き出し、戦士としての覚醒を促します。


フィリオサはジョーの奴隷として成長し、彼の残虐な支配の下で生き延びるための強さと戦闘技術を身に付けます。彼女は、ジョーの信頼を得て彼の精鋭部隊の一員となりますが、心の中では常に復讐の炎を燃やしています。
その後彼女はジョーの傘下の警護隊長ジャックと協力し、最終的に決死の脱走を図ります。逃亡中、フィリオサは過酷な砂漠を横断しながら、さまざまな危険に立ち向かい、生き延びるための戦いを繰り広げます。特にウォータンクを追跡するディメンタスの手下との壮絶なバトルはアクション映画として必見です。

最終的にフィオリサは自らの戦士としての技術とリーダーシップを駆使し、ディメンタスとの究極の対決に挑みます。

星と共にあれ=スターウォーズとのテーマ的共鳴

映画「マッドマックス:フュリオサ」には、いくつかのシーンやセリフにおいてスターウォーズの影響が感じられます。特に「星と共にあれ」というセリフは、「フォースと共にあれ」と酷似しており、観客に強い印象を与えます。このセリフは、登場人物たちが困難な状況に立ち向かうための希望と勇気を象徴しています。砂漠という荒野で暮らす者には星々が一つの希望であったと思われます。
「星と共にあれ」というセリフは、物理的な星々が道しるべとなることと同様に、精神的な指針としての意味を持ちます。荒廃した世界で、星は未来への希望と新たな道を示すものだからです。

また、物語全体に流れるテーマにもスターウォーズとの共鳴を感じます。例えば、フィオリサの旅と成長は、ルーク・スカイウォーカーの冒険と自己発見の旅を思わせます。どちらの物語も、個人の内面的な葛藤と外部の敵との戦いを描きながら、希望と勇気を持つことの重要性を強調しています。
また、ディメンタスへの復讐もスターウォーズでいうとルークの父親をダークサイドに引き込んだ皇帝への復讐と似ています。

宗教的・神話的な考察

「星と共にあれ」には宗教的・神話的な背景も感じます。星は古代から航海者や旅人にとって重要なナビゲーションツールであり、同時に天の導きとしても象徴されてきました。キリスト教においても、星はベツレヘムの星としてイエス・キリストの誕生を知らせる役割を持ちます。こうした背景を考慮すると、「星と共にあれ」というセリフは、フュリオサが新たな未来を切り開くための道しるべとしての役割を果たしていることを考察できます。

また、フュリオサがディメンタスを追い詰め、最終的に彼と対決するシーンは、旧約聖書のダビデとゴリアテの戦いを思わせるものであり、小さき者が大きい者を打ち負かす正義のテーマが強調されています。ディメンタスを倒すことで、フュリオサはある意味自身の過去と向き合い、新たな未来を切り開くことができたのです。これらのシンボルやモチーフは、映画の物語に深みを与えています。

十字架を背負うフュリオサ

また、十字架のような樹木に貼り付けにされた母親と対になるかのようにフュリオサも警護隊長ジャックとウォータンクで逃げるときに爆発を背中で受けるときの映像は(本文のアイキャッチ画像)まさに十字架を背負うフュリオサとも受け取れます。
とにかく、この映画は見ていくと深い意味もあることを理解するとかなり楽しめます。

感想と最新情報

この映画、現在賛否両論が渦巻いてます。賛の方から言わせてもらうと何よりアクションが素晴らしいことです。バイクも車も本物を使ってやり放題。しつこいくらいのアクションのつるべ打ち。まさに見どころ満載です。
さらに美術セットも素晴らしく、砦、ガスタウン、弾薬畑などすごいセット。そのFS(フルショット)がものすごい迫力。そういう意味では大画面で見なければ全く意味のない映画と言えます。

変わって否の方を言うと、2回見ても一部ストーリーがわかりにくいところがあります。特にフュリオサがディメンタスに拉致された後に別のグループとの戦いがありますが、それがストーリー上何のためにあるのか今でも意味不明です。さらに前作ではフュリオサがイモータン・ジョーに怒りを爆発するシーンがありますが今作ではイモータン・ジョーに恨みを持つことを意味するようなシーンが今ひとつありません。なので監督の演出ミスではないかと思うくらいです。(あくまで個人的な感想です)

主役二人の演技や最新情報

主役のアニャ・テーラー・ジョイの眼力がすごいです。目で気持ちを伝えているという感じです。と、思っていたら、実際、監督もアニャに目で気持ちを伝えろ・・みたいな演出指導をしていたようです。

そして、子供時代のフュリオサがアニャ・テーラー・ジョイの風貌にそっくり。よくそっくりの子役探してきたな・・と、思っていたら、噂によるとCGでアニャに似させたようです。すごいCG技術です。

いつもはヒーロー役のヘムズワースは今回、声が変だな〜と思っていたら、なんと今回の悪役用の声を探求した(演技)そうです。ものすごいプロ魂です。

フュリオサがクライマックスにディメンタスに復讐するとこはちょっぴり演出的にしつこかったような気がします。あっさりやられては意味ないというのはわかりますが、ちょっとしつこすぎです。

この映画をひとことで言うならジョージ・ミラーがこだわり抜いたマッドマックスサーガの集大成です。サーガはジョージ・ミラーが生きてる間は続く可能性大かもしれません。
と、言いたいところですが興行的には前作を下回る成績のようで、ミラーが長年温めていた次回作『マッドマックス:ザ・ウェイストランド(原題)』に待ったがかかる可能性があるようです。監督自身は、先月カンヌで「『ウェイストランド』のことを考える前に、『フュリオサ』の結果を見守る」と語っており、次回作の可能性は「フュリオサ」次第であることを認めています。

さらに高齢であることも考慮すると、次回作はもし実現したとしてもかなり先で、別の監督の可能性があるかもしれません。ただ、元々この映画はどちらかというとマニアックな映画なので特別大衆に迎合しなくてもいいような気がします。ですが、これだけの大作になってしまうとそうも言ってられないのが映画興行の厳しいところです。

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