【映画レビュー】『DIGGER/ディガー』感想|賛否両論も納得?トム・クルーズが挑んだ異色作の真価とは

① 映画『DIGGER/ディガー』を観ようと思った理由

トム・クルーズといえば、やはり『ミッション:インポッシブル』シリーズに代表されるアクションスターという印象が強い。

そんな彼が、今回はこれまでとはひと味違う役柄に挑んでいる。予告編などからも、派手なアクションで魅せる作品とは違う雰囲気が伝わってきた。

しかも、公開後は賛否両論の声もあるという。

いったいどんな映画なのか。そして、トム・クルーズは俳優としてどんな新しい顔を見せてくれるのか。そんな興味から、ある意味怖いもの見たさ(笑)で観てみることにした。

② 『DIGGER/ディガー』あらすじ【ネタバレなし】

主人公は、石油採掘会社のCEOとして君臨する大富豪、ディガー・ロックウェル。莫大な富と権力を手にした彼は、自分の利益を最優先する傲慢な人物だ。ところが、彼の欲深い行動がきっかけとなり、地球は滅亡の危機に陥ってしまう。

事態を重く見た大統領は、ディガーに危機の収拾を命じる。自らが引き起こした大惨事を前に、世界を救うために動き出すディガー。しかし、そもそもの原因をつくった本人が、果たして人類の救世主になれるのだろうか。

物語は、世界規模の危機をめぐって展開していくが、本作は単純なヒーロー映画とはひと味違う。主人公は正義感あふれるヒーローではなく、欲望と自己保身にまみれた権力者。そんな人物をトム・クルーズがどのように演じるのかも、大きな見どころだ。

監督を務めるのは、『バードマン』や『レヴェナント:蘇えりし者』で知られるアレハンドロ・G・イニャリトゥ。独特の映像表現と、一筋縄ではいかない物語で知られる監督だけに、今回も王道の娯楽映画とは異なる展開が待ち受けている。

果たしてディガーは、本当に世界を救うことができるのか。そして、この物語が最後にたどり着くものとは――。

③ 『DIGGER/ディガー』感想・印象に残ったシーン

アクションスターから演技派俳優へ大変身!

本作を観てまず驚いたのは、トム・クルーズの変わりようだ。

これまでのトム・クルーズといえば、やはり『ミッション:インポッシブル』シリーズに代表されるアクションスターのイメージが強い。危険なスタントにも自ら挑み、スクリーンの中を縦横無尽に駆け回る姿が印象に残っている。

ところが、『DIGGER/ディガー』で見せる姿は、そんなイメージとはかなり違う。

今回はアクションで観客を魅了するのではなく、役柄そのものになりきり、これまでとは違う表情を見せている。トム・クルーズがここまで思い切った役に挑戦したことには、正直驚かされた。

単に見た目や雰囲気が違うというだけではない。これまでの出演作を知っているからこそ、その変化がより際立って感じられる。

トム・クルーズの新しい一面を観られたことは、本作の大きな収穫だった。

セリフの応酬が続き、途中で少し退屈に感じることも

一方で、映画全体を通して、気になるところもあった。

本作はアクション映画のように次々と事件が起こるタイプではなく、登場人物たちの会話を中心に物語が進んでいく。そのため、セリフの応酬が続く場面では、少し退屈に感じてしまうこともあった。

トム・クルーズの演技には引き込まれるものの、物語の展開そのものに勢いを感じられない時間もある。ここは観る人によって、かなり好みが分かれそうだ。

派手なアクションや分かりやすい展開を期待して映画館に足を運ぶと、思っていた作品と違うと感じるかもしれない。

実際、私自身も、途中では少し長く感じる部分があった。

ただ、そこで作品全体を判断してしまうのは、少し早いのかもしれない。

最後の最後に見えてくる、この映画の本当のテーマ

私が本作でいちばん印象に残ったのは、やはり最後の最後だ。

それまで観てきた物語を振り返ると、終盤になって初めて、この映画が本当に描こうとしていたものが見えてくる。

途中のセリフの応酬に少し退屈さを感じていたこともあり、最後にたどり着いたところで、作品に対する見方が変わった。

映画を観ている最中には、何を伝えたい作品なのか、すぐにはつかみにくいところもある。しかし、最後まで観ることで、それまでの展開が別の意味を持ってくる。

もちろん、この結末をどう受け止めるかは、人によって違うだろう。すっきりした結末や分かりやすい答えを求める人には、戸惑いが残るかもしれない。

それでも、私にとっては、最後まで観たからこそ感じられたものがあった。

途中の展開だけで評価するのではなく、最後まで観て初めて見えてくるものがある。そこが、本作の印象を大きく左右する部分だと思う。

④ 『DIGGER/ディガー』はなぜ賛否が分かれるのか?

本作を観て、評価が分かれるのも無理はないと感じた。

まず大きいのは、トム・クルーズに何を期待して映画館へ行くか、という点だろう。『ミッション:インポッシブル』シリーズのような作品を思い浮かべる人にとって、本作はかなり予想外の映画かもしれない。

危険なスタントやスピード感のあるアクションで楽しませるのではなく、会話を中心に物語が進み、主人公の風変わりな人物像や、作品に込められた皮肉が前面に出ている。トム・クルーズの新たな一面を楽しめる一方で、途中のセリフの応酬が長く退屈に感じられる場面もある。ここは好みが分かれるところだと思う。

また、物語の最後になってようやく見えてくるテーマも、評価を左右する要素にまではいかないのかもしれない。観終わったあとに、それまでの展開を振り返りたくなる人もいれば、もっと分かりやすい展開や結末を求める人もいるはずだ。

そして、作品への賛否を語るうえで避けて通れないのが、アメリカでの興行成績だ。

『DIGGER/ディガー』は、公開初週末の北米興行収入がわずか800万ドル(約12億6,400万円)にとどまり、初登場5位という厳しいスタートになった。トム・クルーズ主演の大作として考えると、まさに惨憺たる結果だ。

ただ、この数字だけで映画の良し悪しが決まるわけではない。むしろ、従来のトム・クルーズ作品とは大きく異なる作風が、幅広い観客に受け入れられなかった可能性はありそうだ。アクションスターとしての彼を期待していた人にとっては、求めていたものと違ったのかもしれない。

個人的には、途中で少し退屈に感じたのは事実だ。それでも、トム・クルーズがこれまでとは違う役柄に挑んだことや、最後になって作品の本当のテーマが見えてくる点には興味を引かれた。

誰にでも勧められる映画とは言いにくい。しかし、興行的に苦戦しているからといって、挑戦そのものに意味がなかったとは思わない。賛否が分かれるのは、これまでのトム・クルーズ作品のイメージを大きく裏切る一本だからかもしれない。

⑤ トム・クルーズが挑んだ異色作の真価とは

今回の『DIGGER/ディガー』を観て、トム・クルーズの俳優としての挑戦は、ある意味で成功していると感じた。

これまでの彼には、『ミッション:インポッシブル』シリーズに代表されるアクションスターとしての印象が強かった。危険なスタントを自らこなし、観客を楽しませる。そんな姿を長年見てきただけに、本作での変貌ぶりには驚かされた。

外見や話し方まで変えて、これまでのイメージとは大きく異なる人物を演じきる。単にアクションを封印したというだけではなく、俳優として新しい領域に踏み込もうとする意欲が伝わってきた。

個人的には、この演技が評価され、アカデミー賞にノミネートされる可能性もあるのではないかと思っている。もちろん、実際にノミネートされるかどうかは別の話だが、少なくとも今回の役への挑戦は、それだけの期待を抱かせるものだった。

ただし、ここで分けて考えたいのが、俳優の演技と作品全体の評価だ。

主演俳優が素晴らしい演技を見せたからといって、映画そのものが傑作になるとは限らない。本作も、トム・クルーズの変身ぶりや演技には感心した一方で、中盤の会話が続く展開には少し退屈さを感じた。最後になって作品の本当のテーマが見えてくる構成も、受け止め方によって評価が変わるだろう。

つまり、トム・クルーズの挑戦は評価したい。しかし、それと『DIGGER/ディガー』という映画をどう評価するかは、また別の問題なのだ。

興行成績が振るわなかったことも含め、本作は誰もが手放しで楽しめる作品ではないのかもしれない。それでも、アクションスターとしての成功に安住せず、これまでとは違う役柄に挑んだトム・クルーズの姿勢には、意味があったと思う。

映画としては賛否が分かれても、俳優トム・クルーズの新たな一面を観られた。その点だけでも、この作品を観た価値はあったと感じている。

⑥ 『DIGGER/ディガー』に仕掛けられた三重構造

※この記事では、映画『DIGGER/ディガー』の結末や物語の構造に触れています。未鑑賞の方はネタバレにご注意ください。

もうひとつ、この映画で興味深いと感じたのが、物語の構造だ。

本作は、ディガー・ロックウェルという人物の物語であると同時に、その人物を舞台で演じるカーティス・マークソンの物語でもある。そして、その舞台を観ている観客がいる。

つまり、ディガーという役柄、彼を演じる役者、そして舞台を観る観客。それぞれの立場が重なる、三重構造になっている。つまり、こんな感じ。

第1層:物語の中の人物
ディガー・ロックウェル
舞台上で描かれる人物

↓

第2層:演じる役者
カーティス・マークソン
舞台でディガーを演じる役者

↓

第3層:舞台を観る人々
舞台の観客
カーティスが演じるディガーを観ている人々

こうした仕掛けを使った映画はほかにもある。たとえば『脳内ニューヨーク』は、舞台と現実の境界が次第に曖昧になっていく作品だ。『バードマン』も、舞台上の役柄と俳優自身の人生が重なり合う。

ただ、こうした構造が面白いのは、単に物語が複雑だからではない。演じられる人物と、それを演じる人間、さらにそれを観る人間がいることで、私たちが「現実」だと思っているものまで、少し違って見えてくるところにある。

『DIGGER/ディガー』も、表面的な物語を追うだけでは捉えきれない部分がある。最後になって作品の本当のテーマが見えてくるのも、こうした構造と無関係ではないのかもしれない。

興行成績や作品そのものの評価には厳しい面がある。それでも、トム・クルーズの演技への挑戦と、こうした物語の仕掛けについて考える余地があったことは、私にとって印象に残る点だった。

⑦ 合わせて読みたい

『DIGGER/ディガー』のように、従来のイメージにとらわれない映画や、ひと味違った表現に挑んだ作品に興味がある方は、こちらの記事もどうぞ。

そして、トム・クルーズの近年の代表作はこちら。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA